仕事でもプライベートでも、ソーシャルディスタンスを心がけましょうとか、密を避けましょうなど、1年以上言われ続けていますが、さすがに一人で生き続けるのは無理があるものです。画面越しのバーチャルなやり取りが増えている中、有事にリアルで頼りになるのは家族や親友、近所のつながりだったりします。特に家族の最小単位であるパートナーは、こういう時だからこそ考え始めるきっかけにもなりえるでしょう。
そこで今回は、同性婚やパートナーシップ制度について少し、真面目に特集してみます。
同性婚に関する判決と、自治体の登録パートナーシップ制度
同性愛者に対しては,婚姻によって生じる法的効果の一部ですらもこれを享受する法的手段を提供しないとしていることは,立法府が広範な立法裁量を有することを前提としても,その裁量権の範囲を超えたものであるといわざるを得ず,本件区別取扱いは,その限度で合理的根拠を欠く差別取扱いに当たると解さざるを得ない。 したがって,本件規定は,上記の限度で憲法14条1項に違反すると認めるのが相当である。
(札幌地方裁判所:平成31年(ワ)第267号 損害賠償請求事件 判決文抜粋)
上記は2021年3月17日、札幌地方裁判所での判決文抜粋で、同性婚を認めないのは法の下の平等を定めた憲法14条に違反するという初めての判決となりニュースにも多く取り上げられました。日本でも同性婚やパートナーシップ制度の要望が日ましに高まっていて、今後「選択の自由」が今後より広がる可能性が出てきています。もちろん権利には義務も生じますし、人生バラ色!になるというものでも必ずしもありませんが選択肢が増えていくこと自体は、前向きにとらえられると思います。
ちなみに、この判決に至った背景には判決文にも記述のある、「登録パートナーシップ制度」を導入する地方公共団体が増加していることも判断に影響しているようです。2015年に世田谷区が日本で最初に導入してから、今では111自治体が導入していて、全自治体のおよそ15%強が導入しているという計算になります(「みんなのパートナーシップ制度」調べ/2021年7月16日時点)。
最近では同性パートナーに関わらず、様々な形態で「家族」と認めるような、まさに「法の下の平等」の実現に向けて動き出している自治体もあり今後も導入件数が増えていくものと見込まれます。
「みんなのパートナーシップ制度」について
みんなのパートナーシップ制度は、LGBT向けのパートナーシップ制度についてまとめた情報サイトです。各自治体ごとの導入率の可視化や、制度を分かりやすく理解できます。
パートナーシップ制度のメリット・デメリットについて
パートナーシップ制度を自治体が導入するということは、住民または自治体において何かしらの要望だったりメリットだったりがあるということです。
法律で決められた権利は無いものの、自治体が決めるルール(条例や要領)によって得られるメリットについて見ていきましょう。
パートナーとして病院での治療等の立ち合いができる
自治体のルールの下で運営している医療機関などでは、患者自身がパートナーシップの証明書を提示することで、パートナーとの面会や手術の同意を求めることができます。特に救急搬送されたときや病状の急変などに役に立ちます。
公営住宅などへ家族として入居が可能
自治体が運営している公共住宅やこの制度に協賛している不動産会社などでは、制度の証明書を提示することでパートナーとしての入居が可能となります。今までは「ルームシェア」などのように他人同士で住むことで同居をかなえてきましたが、堂々とパートナーとして利用できるのはメリットと言えます。
このほかにも、携帯電話で家族割引を利用出来たり、クレジットカードの家族カードを利用できるなど民間のサービスでも利用できるものが増えてきています。
パートナーシップ制度のデメリットについて
パートナーシップ制度のデメリットとしてはあくまで自治体のルールなので、ほかの自治体では原則として通用されません。要は別の自治体に引っ越してしまえば一部例外を除き、この制度は無効になってしまいます。
また各自治体独自のルールなので、一部の条例を除きほかの民間企業や団体へは強制力はなく、国の法律に抵触する部分は対応できません。たとえば配偶者に認められている税制控除や相続などは国の法律で定められているため適用外となります。あくまで各自治体が「あなたたちをパートナーとして確認しました」というものなので、出来ることが限られている点がデメリットと言えます。
一方で、この制度が有る自治体と無い自治体では「どちらに住民税を納付したいか」という基準を決めて住む選択はできます。加えて、病院や公共住宅など公共に近い部分でセーフティーネットとなりえる点が改善されたことは、そのエリアに住むうえで生活面だけではなく身体面や精神面でも安心感があると言えるでしょう。
まとめ
このように国内の環境や世論によって法律自体も変わっていくもので、家族の形も多様に変わっていければそれに応じていずれは法律の内容も改正されていきます(まだ、時間はかかると思いますが)。
それに先んじて多様性を重視する企業では同性パートナーに対しても福利厚生を提供したり、多くの世論を直接受け取る地方自治体で制度を設けたりしています。利用者が増えれば増えるほど、必要な制度として風向きが変わってくるので、興味があれば一度住んでいる自治体の登録パートナーシップ制度を確認してみてはいかがでしょうか。
協力: みんなのパートナーシップ制度